2025年の長野県の医療・介護を考える県民集会

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浅間温泉文化センターでシンポジウムを開催

「2025 年めざした長野県の医療・介護を考える県民シンポジウム」が6月21日松本市で開催され、医療、介護関係者や市町村担当者、議員、一般市民など255名が参加した。シンポジウムは長野県保険医協会も加盟する長野県医療団体連絡会の主催で、行政当局者、医療従事者、介護従事者、患者などそれぞれの立場の方から2025年をめざした長野県の医療と介護のあり方について現状と課題を報告いただき、多くの県民と共にそのあり方を深めていく機会として企画したもの。

県医労連執行委員長の小林氏の主催者あいさつに続き、基調講演として長野県健康福祉部衛生技監の山本英紀氏が、「長野県の医療・介護提供体制の将来像と課題」と題して国がすすめる社会保障・税一体改革の医療提供体制の機能分化と連携体制の強化、今後県や自治体で構築していく地域医療ビジョンや地域包括ケアシステムなどについて報告。長野県のように人口密度が低いところでは医療、介護を提供することは非常に難しい状況にあると指摘、機能分化やかかりつけ医機能の充実が必要だとし、医療、介護を受ける側、提供する側の相互理解の必要性を強調した。また、2025年までに長野県で3600の病床を削減できるとした政府推計の新聞報道にもふれた。

IMG_3593シンポジウムでは最初にコーディネーターの熊谷医師(健和会病院)より、「世界と日本と長野県」と題して報告があり、キューバの医療との比較や長野県との共通点を分析し、長野県の長寿、高い健康度について社会関係資本である人と人とのつながりといった長野県の地域活動の充実に着目した。国がすすめる医療・介護の抑制政策に対して長野県が財産とする地域活動とともに今後いかに医療、介護が連携をしていけるか、その課題は何かといったことなどが長野県の医療介護提供体制を考える上でのポイントとして挙げた。

北澤医師(佐久総合病院)からは急性期病院の立場から、病床の機能分化の実践ということで病院完結型から地域完結型という形で佐久医療センターを立ち上げ、佐久地域で県内初の医療連携合意の取組みを立ち上げたことが報告がされた。現在、入院医療は平均在院日数が短縮されているため、入院当初から退院調整のことを考える必要があること、特に介護との連携ではケアマネジャーといかに情報共有するかが課題であり自院で工夫した経験なども話された。また、国は機能分化や脳卒中など様々な連携パスによる入院期間の短縮と患者のスムーズな移動を考えているが、これでは病気だけ診て患者を見ないいうことで患者にとって幸せとはいえないとし、形式だけの連携については疑問を呈した。

野口医師(元の気クリニック)は開業医として独居高齢者でも、患者の病状と本人の希望、家族の協力と介護ヘルパーの努力によって訪問診療を行いながら在宅看取りができた事例などを報告した。また、国は高齢化社会になるから入院から在宅へと病床削減や施設入所の制限などで医療、介護の抑制を図っているが、高齢社会だから医療費が上がるというのは嘘であり真の要因は所得効果だとする丸山士行氏の研究を紹介し、国は頭を切り替えるべきだとした。一方で国民や医療現場も頭を切り替えなくてはいけないとして、医療、介護の包括ケアにおいて民間の活力に期待するといった竹重俊文氏のような提案も大事ではないかと述べた。

看護師の高橋氏からは、平均在院日数の短縮により精神科、小児科、難病、がん末期、認知症とありとあらゆる人が在宅訪問看護に流れてきている現状がある中で、医療や介護職の知識や技術を向上させることが在宅療養者を支える上での鍵と考え、アンケートを通じて介護職向けの基礎医学の勉強会の企画をした経験が報告された。また、施設の看護師が膀胱留置カテーテル交換ができなかった経験から看護技術に自信をもってもらおうと看護師向けの出張!看護技術、なんでも確認講座をはじめたことなど実践的な報告がされた。

地域包括支援センターの業務を行うケアマネジャーの塩原氏は、今回の要支援者を市町村の総合支援事業へ移行させる改正で、多職種連携会議や地域包括ケアシステム構築のための地域ケア会議、認知症施策としてものわすれ相談会の開催、生活支援サービスの体制整備など人員は変わらず業務が煩雑多忙となったのが実態だと報告された。また、今後チェックリストの事務と相談者への説明について頭を悩ませていること、介護報酬の引下げで介護サービス事業所が利用者にデイサービスなどの回数を減らすなどの影響が出ていること、松本では主に認知症の方をどのように地域で支えていけばよいのかといった議題で多くの地区で地域ケア会議を開催して取り組んでいることなどが紹介された。また、理想と現実にギャップはあるが民医連が提言するお金のあるなしに関わらず、必要な医療、介護、福祉、生活支援が切れ目無く提供され、住み慣れた地域でその人らしく、人間らしく暮らし続けることを保障する「無差別平等の地域包括ケアを目指したいと述べた。

北沢氏からは難病患者の家族としての経験と国の難病対策の歴史などについて報告がされ、難病患者が医療だけではなく、福祉、介護の連携の中でその地域で人間らしく生きたい家族も大きな負担なしに普通に生活していきたいというのが願いだと訴えた。

フロアからは、御代田の林歯科医師より認知症と歯の関連について研究報告が紹介され、地域包括ケアの中でも歯科分野を重視して欲しいとの意見、保健師からは今後は地域に重症者がたくさん戻ってくるため専門職が発言力を強めていかないと地域包括ケアは絵に描いた餅になるなどの指摘がされた。

シンポジウムの詳細については、長野保険医新聞などで紹介を予定している。