長野県の医療・介護のこれからを考える県民集会

120161030_idanren0月30日(土)、保険医協会も参加する長野県医療団体連絡会は岡谷市カノラホールで「長野県の医療・介護のこれからを考える県民集会」を開催した。現在長野県では県内の病院の病床削減も含めた地域医療構想の策定に向けた協議を行っているが、長野県における医療・介護の今後のあり方について県民・関係者とともに考える機会として企画した。集会には、地元岡谷市の市民を始め、医療・介護従事者、行政関係者、地方議員など300名以上が参加。会場も満席となり活気にあふれた集会となった。
県医労連執行委員長の茂原宗一氏の主催者挨拶の後、諏訪赤十字病院院長の大和眞史氏から「諏訪地域における病院長連絡会の取り組みを通じて」と題してメイン講演が行われた。
大和氏は、12年前諏訪日赤院長に赴任しすぐに地域で連携をという思いがあったが、当時は医療連携課を持たない病院も多くなかなかうまくいかなかった。今は諏訪地域の全病院が揃って定期に会を持って連携を深め、満床の時などは連絡を取り合いながら融通をしていると、紹介した。国の政策である地域医療構想については病床の機能分化と病床数削減による社会保障費の削減を目指すものだが、今でも医療費が低いレベルに抑えられている県でさらに医療費をどうやって減らしていくのか。また、同じ長野県でも諏訪と大北とでは条件が違うのに日本全体同じ政策でうまく乗り切れるのか疑問だとし、それぞれの地域の意見を集約しながら政策を考える必要があるとした。データ収集に基づく将来医療需要に応じた医療提供が必要だと述べた。諏訪地域の現状に関しては概ね市町村ごとに基幹病院があり、それぞれに機能の幅を持った診療をし、救急搬送も短時間でできており充実した構想区域だが、今後は高齢者の増加による回復期、慢性期の病床が不足するなどの課題があると言われた。最後に地域のニーズの中で自分たちの病院の10年、20年先を考えていく必要があると締めくくった。

その後、進行役の県民医連会長の熊谷嘉隆氏(健和会飯田中央診療所所長)から各分野の報告の基調となる問題提起があった。熊谷氏は、「国・県が進める病床削減で地域の急性期医療が守れるのか」「療養病床削減計画の中で地域での医療依存度が高い長期療養医療が守れるのか」「地域における入所介護施設の受け入れ体制はどうか」「地域包括ケアを担う在宅医療、看護・介護の受け入れ体制はあるのか」など4つの課題を挙げた。

各分野からの報告のトップは、下伊那郡阿南町にある新野へき地診療所所長の原政博氏。まず、2025年にいわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となる超高齢化社会を迎え、地域における病床の機能の分化を推進し、患者の早期の居宅等への復帰、退院後の在宅療養及び介護サービスの充実を目指すものと国の政策の地域医療構想の誕生の背景について説明し、「在宅医療等の対象となる居宅と介護施設の受容力の評価が行われていない」「居宅療養を支える地域包括ケアシステムの構築が並行して進んでいるか」と国の政策に対して疑問を投げかけた。飯伊の特徴としては、中山間地に位置し人口規模が小さく高齢化率が著しく高い小規模自治体が多く「在宅医療・介護連携推進事業」の広域的な取り組みが欠かせないと説明。地域医療構想の課題の克服に向けた飯伊の取り組みとして医師会等の医療・介護関連団と関係自治体で構成する「南信州在宅医療・介護連携推進協議会(仮称)」の準備会を立ち上げ、「退院支援から退院調整のルール作り」の本年度中の完成を目指していることなどが報告された。

続いての報告者は佐久総合病院小海分院の副看護部長の小林由美子氏。小林氏は佐久地域における医療体制・人口・高齢化率や必要病床数の検討、課題を報告した。そして現在国民の死亡場所調査の80%が病院だが、60%以上の国民はできるだけ長く自宅で過ごしたいと考えている、在宅医療推進の理由を見失わないようにし「その人が希望する場所でその人らしく最後まで生きることを支える医療の推進が必要である」とまとめた。

3人目の報告者は上田生協診療所訪問看護ステーションの丸橋留美子氏。丸橋氏は在宅療養についての状況を報告し、その中でも特徴的な事例を5つ紹介した。その事例は5例とも退院し在宅療養に移ったが2週間以内には再入院か亡くなってしまったというものだった。丸山氏は今後2025年に向けてベッドが削減されると必要な時に入院ができず、在宅調整も不十分なまま退院せざるを得ないことになってしまう。多くの人に現状を知ってもらい、憲法に乗っ取った誰もが安心して医療、介護を受けられる長野県、そして日本にしていかなければならないと強く訴えた。

最後の報告者は、木曽病院・木曽地域の医療を守る会代表の井口利夫氏。井口氏はまず木曽地域の面積は香川県より少し小さいぐらいだが人口が3万人を切りそのうち4割近くが高齢化、医療の中核病院も木曽病院しかない全国でも稀な医療圏だということを説明。木曽病院だけが頼りの中で木曽病院の看護師不足の危機などを聞き平成22年に守る会を成立した。会員数は1万人以上、木曽看護学校の創設要望、木曽病院への協力など守る会の活動を紹介。現在、地域医療構想が住民の声を無視して進んでいるが、それに対して郡内9か所での地域勉強会と説明会、木曽病院のベッド数等、現状維持の要請書を知事に提出などの活動を報告。しかしまだまだ医師不足などの課題も多く今後も学びながら、守る会の取り組みを進めたいとまとめた。

4名の報告の後のフロアーからの質疑応答、意見発表があり「今後病床数が減り在宅医療を進めるなかで介護者の負担を減らすレスパイト入院は保証されるのか」「地域医療構想調整会議で様々な意見を出し、多くの抗議を言ったが触れられずただ意見を聞くだけで反映されていない」や、「これ以上病床を削減されたら地域に人が住めなくなってしまう、今皆さんが病床削減や医師・看護師・介護士不足を訴えているがまだまだ多くの人を巻き込んだ運動になっていないのが残念だ。医療・介護関係の皆さんがもっと行政や議会、住民に訴え具体的な実状を知ってもらい多くの人を巻き込んだ大きな運動にしていってほしい」などの様々な質問、意見が出た。県民集会終了後には、「それぞれの立場からの報告が聞くことが出来てとても勉強になった」「削減ありきは間違っている」などの感想文が寄せられた。