10医療圏の調整会議からヒアリング(第3回地域医療構想策定委員会)

6月9日に第3回地域医療構想策定委員会が開催された。二次医療圏からなる10の調整会議では2回会議を行いそれぞれ意見としてまとめた資料をもとにヒアリングを行った。また、事務局からは骨子(案)が示された。

調整会議からの意見は全体として(1)国の必要病床数の推計値についてはあくまで参考値とすべき、(2)病床の機能分化の検討には受け皿となる在宅医療、介護施設の整備が必要であるといったことで一致していた。しかし、地域医療構想の必要病床数の推計に関して二次医療圏内で全ての機能を完結させる「患者住所地ベース」か他の圏域への患者の流出や当該圏域への患者流入を前提とした「医療機関所在地ベース」のいずれかが望ましいかについては、意見が分かれた。患者の流出入が多い圏域では現在うまく機能している連携体制を変更する必要性はないなどの意見が多かった。一方で他の圏域へ流出が多い圏域の代表からは、流出が多いのは医師不足や病床不足が原因であり、医師を確保したうえで圏域内での医療機能を完結することが望ましいといったものだ。なお、高度急性期については脳卒中や急性心筋梗塞などは各圏域内で充実させるが、それ以外については他圏域への流出はやむなしといった考え方はある程度共通している。

医療機関所在地ベースを基本とする圏域は佐久、上小、飯伊、松本、長野、患者住所地ベースを基本とするのは諏訪、上伊那、木曽、大北、北信であるが、委員から医療機関所在地ベースと患者住所地ベースで意見が分かれているがどう調整するのかとの質問に対して事務局では県全体としてどちらかに統一するとの説明があったが、それは無理だとの声も上がった。

6月から9月に各圏域で調整会議が開催され、それらの意見も踏まえて9月2日の第4回地域医療構想策定委員会では構想の素案が提示される予定である。

各調整会議からの意見

地域医療構想骨子(案)

調整会議からの主な意見(抜粋)

地域医療構想について

  • 短期間で現在の流出入の流れを変更することはできない。新たな投資も必要であり効率が悪い(佐久)
  • 現に機能している連携を構想会議によって崩さないでほしいといった意見が出されている(諏訪)
  • ベッド削減で医師数がさらに減少すると医師の偏在が加速する。スタッフのモチベーションも下がり、結果として医療レベルが低下することになる。医師確保に苦労しているが、木曽地域にはなかなか集まらない。他の圏域に依存することは木曽地域では地域の特性として問題がある(木曽)
  • 長野県全体の人材の偏在を解消してどこでも平均的医療が受けられるようにすべきだ。特殊で高度な施設を受診する患者は流出とはみなすべきではない。(大北)
  • 患者は医療圏を意識して医療を受けているのではない。高度急性期医療について地域完結は困難で隣接の長野医療圏との連携で確保する必要がある。脳卒中急性期及び急性心筋梗塞に対応できる専門医を確保するなど緊急的に対応すべき疾病については圏域内で完結できる体制をとる必要がある。(北信)
  • 基本的な考え方は患者の流出入を制限するのではなく今まで通りにフリーアクセスを維持すべき。これまで患者の流出入を前提に医療機関同士のネットワークを整備してきた。これを患者所在地ベースとすると医療機関の有様を大きく変えることとなる。また、そうするのであれば医師確保と設備投資が必要である。(松本)

病床機能分化について

  • 診療報酬や介護報酬の具体的な内容が明らかでないと病床機能の変更は検討できない。(佐久)
  • 病棟単位の機能ではなく、病床単位で考慮したらどうかとの意見もある(諏訪)
  • 各医療機関の努力で効率的で質の高い医療が提供されている。医療機能の分化など地域医療構想の考え方が先取りされているのでこれ以上の大きな計画は必要ない。(飯伊)
  • 病床機能別で考えるのではなく、疾病単位で圏域内の医療機関連携の在り方の論議が必要との意見がある。疾病による広域レベルの集約化は容認すべきで、圏域を超えた連携も考慮すべき。(長野)
  • 高額医療を必要とする疾病と高度医療管理を必要とする疾病との整合性がない。点数だけの分類はおかしいので機能分化における医療内容の定義を明確にしてほしい。(大北)
  • 高度急性期と急性期は密接不可分で一体的に考えるべき。(松本)

在宅医療・介護の受け皿について

  • 在宅介護の必要量が3倍になるイメージだが、それを担えるかが大きなテーマで、在宅を担う医師が不足している。(諏訪)
  • 療養病床が減ると慢性期の患者を受け入れる在宅介護をいかに充実させるかが大変だ。在宅医療は実際に担う先生はボランティア精神でやっている。(上伊那)
  • 今後在宅療養者が増加すると開業医のマンパワーが不足し地域全体の医療過疎がおきる。(飯伊)
  • 療養病床の削減が可能かどうかは在宅療養の受け皿となる介護施設と居宅の受容力の評価が欠かせない。居宅介護の受容力が不足すると家庭崩壊ひいては地域崩壊につながる危険性がある。(飯伊)
  • 在宅医療推進の方針があるが、介護施設不足、人材不足など様々な課題があり、全体として在宅移行は困難な状況にある。病床機能を整備するためには在宅医療や介護などの受け皿の整備が不可欠である(長野)
  • 在宅療養支援診療所などが必要だが担当できる医師が少なく、看護師、薬剤師も慢性的に不足。老老介護が多く、在宅医療を充実するために必要な訪問看護ステーションや老人保健施設が不足。当該地域へ企業も参入しない。(大北)
  • 国は在宅医療を推進するが、高齢単身世帯の増加、核家族化など家庭の介護力が低下して在宅医療の確保は容易ではない。(北信)

病床の必要量の推計値について

  • 国の推計は2013年を基としているが、その後の動きなども反映させるべきだ。(佐久)
  • 数字に縛られることなく我々が必要とするベッドは必要な数だけボトムアップすることが本来の在り方。国の病床数の推計は参考値としそれに縛られないというのが調整会議のコンセンサス。(諏訪)
  • 従前から医師及び病床数が少ないために生じている流入・流出の状況だけをとらえて将来の適正病床数を推計することは望ましくない。ベッド数削減ありきではなく、その地域の必要ベッド数の積み上げで議論すべき。(上伊那)
  • 療養病床の医療区分1の7割を在宅に移行させる推計値は患者の状態や療養環境を考慮しない機械的なもので納得できない。安易に在宅に移行させることは危険性がある。(飯伊)
  • 現在の入院患者数よりも少ないベッド数が示されていることに不安を覚える。(木曽)
  • 点数だけの分類はおかしいので機能分化における医療内容の定義を明確にしてほしい。診療報酬や介護報酬改定による影響を反映した最新データが必要だ。(大北)
  • 入院受療率の見積もりなど国の推計は問題がある。国の示した推計値は一定の仮定の下に出された推計値であり、あくまで参考値として縛られずに検討すべき。推計値を目標として設定していくのは危険である。病床機能の転換は各医療機関の自主努力で進めるべき。のピークは2030年であり2025年を目指してどうなるのか。(松本)

各委員からの意見

  • 必要病床の推計値はあくまで仮定であり、あっているものではない。医療投入資源量を何点と決めているが実際のステージとは違う。私は目安にもならない、あくまでも参考の参考値と考える。それをあたかも目標値のように扱うのは日医でもおかしいといっている。
  • 現状肯定の意見が多いが、今後の構想といった視点が不足している。流出している地域の患者の中には不満を持っている患者もいる。医師を強制的に送り込んでも地域医療を充実させる必要がある。
  • 財政力が弱い町村では医療機関自体の継続可能性といったことも考える必要がある。
  • 人口定着のためにも地域医療は重要なウエートを占めている。地方創生というが地域医療が守れないところではいくら地方創生と呼びかけても無理だ。
  • 点数により病床機能区分が無意味というならその対案を示して欲しい。医療にコストがかかりそれをだれが負担するのかといったことも考えるべき。西日本では病床が多くモラルハザードが起きている。ある程度の数値的なものがなければ議論にならない。医療機関の構造改革が迫られていること、患者の受療行動の見直しなども必要だ。
  • 地域医療構想策定委員会は各医療圏の問題点を抽出するといったことで意義はある。必要病床数は国の法律によるもので仕方ないが、そこに不確かな部分があるということを共通認識として欲しい。
  • 今後の在宅医療の現実的なあり方を骨子に示す必要がある。在宅療養診療所の数も足りない。訪問看護ステーションも強化型でなければ看取りはできないし、そもそも年間400件以上の訪問がなければ事業所が成り立たないのが現状だ。
  • (推計値は)参考値としてうたった上で、記載すべき。国の方針だからやらなければいけないというのならそのことを一筆書き込むべきだ。見直しができるといった文言がどこかに必要だ。